“耳をすませば”の続編“耳をすまして” 第一幕 夢への旅立ち

○空港搭乗ゲート前

中学を卒業した聖司は高校には進学せず、イタリアのアトリエでバイオリン作り見習いとして修行をするため本日旅立つ。

空港には、聖司のおじいさんである西伺朗、そして雫が見送りに来ている。

聖司「ありがとう雫」

雫「うん」

聖司「俺悲しくなったり、辛いことあってもお前のあの歌うたって頑張るからな」

雫「うん私も頑張る、いっぱい手紙書く」

西「あとのことはフラメンコに頼んでるから」

聖司「ありがとうじいちゃん、雫も頑張れよ」

雫「うん」

聖司「それじゃあ」

こうして聖司は夢に向かって旅立った。

 

○イタリア空港

ゲートから出てくると、聖司に向かって手を振っているイタリア人が、

イタリア人は聖司の名前を呼んでいる。

聖司「あ、フラメンコ?」

フラメンコ「おー、西のお孫さん」

聖司「はい」

フラメンコ「そんなかしこまんなくて大丈夫ね、私日本語話す、さあさあ、車外に止めてあるだから」

聖司とフラメンコは駐車場につくと車に乗り込みアトリエへと向かう。

車の窓からは、イタリアの街並みが次々と流れてくる。

聖司はこれだけで何か少しだけ自分の感性が磨かれているような、そして、少しだけ自分の夢に近づいているような気がした。

小一時間ほど車を走らせると、すぐにアトリエの前についた。

フラメンコ「じゃあ、私はここまでね、アトリエの上があなたの部屋、302号室、詳しいことは明日また説明するから今日はゆっくり休む」

聖司「ありがとう」

フラメンコは帰っていった。

木でできたドアをノックしたが、返事がないので、聖司はドアを開けてアトリエに入った。

中には地球屋とは比べ物にならないくらいの、見事なバイオリンがたくさんつるされていた。

聖司はアトリエに入ると、さらに部屋の隅々を観察するように歩き回る。

机の上には、目の覚めるほど綺麗な女性の写真が置かれていた。

その時、外から誰かが入ってきたので聖司は振りかえった。

まるでモデルのように綺麗な女性だ。

聖司の人生でこれほどまで綺麗な女性は見たことがなかった。

その女性はカトリーナ・フランチェスコという女性でプロのバイオリニストである。

カトリーナ「おばあちゃんどこにいるか知ってる?」

聖司「ああ、ごめん今日からなんだ」

聖司の頬が少し赤くなった。

カトリーナ「そう……」

 

 

 

それから聖司と雫は、手紙でお互いの近状を知らせあった。

 

○図書館 雫 高校一年生

雫は机で手紙を書いている。

聖司へ、とうとう図書カードがなくなりバーコードになりました。

 

○アトリエ 聖司 17歳

聖司手紙を書いている。

今日初めて、バイオリンを触らせてもらえたよ、雑用ばかりだったけどこれからますます自分の腕を磨いていこうと思う。

 

○図書館 雫 高校二年夏

雫は図書館の机で手紙を書いている。

今日は花火大会がありました。そちらでも花火大会などはありますか?

 

○アトリエ 聖司 18歳

聖司はアトリエで手紙を書いている。

まだまだ半人前だが、ようやく人に見してもいいレベルのバイオリンが作れるにようになったよ。

○ 雫の部屋 雫 高校三年生 夏

雫手紙を書いている。

進路が決まりました。とりあえず短大に行こうと思います。

この前のコンペは二次で落ちたけど、まだまだ頑張ります。

聖司も就職頑張ってね。

 

雫は手紙から顔を上げると、窓のカーテンを開けた。

歩道には浴衣を着た若いカップルが花火大会に行くために歩いていたり、はたまた、自転車を二人乗りしているカップルなどが見える。

その時、空に花火が打ち上げられ夜空に満開の花を咲かせた。

キッチンから、母、月島朝子が雫を呼ぶ。

朝子「雫ごはん、雫、起きてるの!?」

朝子「しずくー! さめちゃうわよ!」

雫「わかった、もううるさいな!」

 

リビングのテレビでは、高校球児特集で杉村の映像が流れている。